病態
- 胸郭出口症候群は腕神経叢が牽引もしくは紋扼されている体型的素因に日常生活上の軽微外傷の反復や一撃の頭頸部外傷などの刺激が加わり、腕神経叢の一部が過敏となって頸部・肩甲帯・上肢に疼痛やしびれなどを生じる疾患群。
- 併走する鎖骨下動静脈障害による類似症状も含むが、多くは神経由来の症状である。
症状
- 上肢のしびれ、倦怠感、疼痛、頸部・肩甲帯の凝りや疼痛、頭痛、目眩など症状は多彩。
- 上肢症状は、腕神経叢近位での紋扼や腕神経叢牽引(以下、牽引)では撓側もしくは全体に、肋鎖間隙でも腕神経叢紋扼(以下、紋扼)では尺側に生じる。
診断
身体所見
- 頸部神経根から腕神経叢走行に沿って圧痛や放散痛の発生部位を確認
- 鎖骨上窩で腕神経叢を触診しながら上肢を下方に牽引して腕神経叢の緊張状態や上肢症状を確認
- 肋鎖間隙での紋扼による症状誘発にはRoos testを用いる。同部位が原因ならば多くは1分以内に症状が増悪する。
画像検査
単純X線で頸肋、肩甲骨下方回旋による肩関節の低位や肋鎖間隙の狭小状況をみる。
電気生理学的検査
神経叢の原局した過敏状態なので、異常としてとらえにくい
治療方針
保存的治療
症状誘発動作の回避
挙上動作や重量物をもつなど症状誘発動作は避ける。
装具治療
牽引による障害にはKSバンドで腕神経叢の緊張を軽減させるが、装着に慣れが必要である。紋扼による障害では睡眠時に肩の下に枕を置く。
薬物治療
処方例
①を基本とし、無効例には②を併用もしくは単純使用する。いずれも1日1回から適宜増量する。
- リリカOD錠(75㎎) 1回1錠 1日2回
- トラムセット配合錠 1日1~2錠 1日3~4回
ブロック治療
紋扼には腕神経叢ブロック、牽引には星状神経節ブロックを行う。
体操治療
肩甲骨下方回旋を改善して肋鎖間隙を拡大、腕神経叢の緊張を軽減する壁押し体操、柔軟体操を行う。
手術療法
保存的治療で改善しない紋扼による障害には第1肋骨切除術を行う。このほか前斜角筋切除術や大胸筋移行術が行われることもある。
専門医へのコンサルト
保存的治療を組み合わせても症状が改善しない場合、原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)、手内在筋に筋萎縮を認める Gilliatt-Sumner hand などは専門医へコンサルトする