「透析中の食事って普通にしていいの?」
「透析患者が食事で気をつけることってあるの?」
「透析患者もたまにはおやつが食べたい」
このような悩みを持たれている、腎機能が低下してしまったことで、普通に食事をしていいのか悩んでいる方に向けて、答えていきます。
腎機能が低下してから透析生活が続き、食事制限が辛い、またおいしい食事を楽しみたいと思う方も多いかもしれません。
ある程度の食事制限はあるかもしれませんが、食事管理をしっかり行うことで透析生活でも十分おいしい食事を楽しめます。
この記事では、食事を楽しむために透析患者に向け、食事管理の重要性やポイント、注意点などを解説します。
井口病院では、維持血液透析や緊急透析、血液浄化透析といった透析、治療、入院などに対応可能です。東京の北千住周辺で透析治療をお探しの方は、ぜひ井口病院へご相談ください。
目次
腎不全で体はどのように変化していくか
腎機能とは、体内の水分を一定に保つ調整や血液ろ過、老廃物の不純物を体外へ排出させるなどの機能のことです。腎機能が正常の30%以下になった状態を腎不全と呼びます。
腎不全になると体内の血液をろ過できなくなったり、老廃物を排出できなくなったりするため、体にさまざまな症状をもたらします。また、一度慢性腎不全になると進行を止められず、腎機能としての回復は不可能になり、食事や飲み物などは制限を受けることになります。
腎不全による機能低下が与える影響は、人によって異なりますが、電解質異常や高血圧、だるさや食欲不振などを引き起こすでしょう。
例えば電解質異常が起こった場合、体内のミネラルでもっとも量が多いカリウムに影響を及ぼし、不整脈や心筋梗塞など危険な症状が考えられます。
カリウムが体内にたまってしまうと、血中カリウム濃度が正常範囲の3.5~5.0mEq/Lより上がり、5.5mEq/Lになると高カリウム血症と診断されます。
高カリウム血症の症状には、手足のしびや嘔吐、だるさなどがあげられ、食事や飲み物などでカリウム量の調整が必要です。
また高血圧に関しては、尿量が減少することで水分や塩分が体内にたまり引き起こる症状です。
塩分が体内にたまると、体の浮腫みや血圧上昇がもたらされます。症状が進み続ければ、心不全や肺水腫などの危険な状態の原因にもなります。
このように腎機能低下や腎不全になると、さまざまな症状が体にあらわれ体調不良を起こします。そのため腎機能の代わりに、体内の水分や老廃物の排出機能をサポートする腎臓の治療法として人工透析を行います。
透析患者に必要な食事管理のポイント
腎不全の疾患を持つ透析患者は、血液や老廃物を循環させる治療が必要です。
血液透析の場合、1日4時間の透析を、週3回程度行うのが一般的ですが、腹膜透析は毎日ゆっくりと時間をかけて治療を行う治療法です。正常の腎機能は1日24時間働き続けているため、透析治療だけで腎臓の働きを全て補うことはできません。
そのため透析治療と一緒に、食事管理と付き合っていく必要があります。以下は透析患者が押さておくべき、食事管理のポイントを4つ挙げています。
エネルギー・タンパク質を十分に摂取
人間は体内で作られたエネルギーを使って、日々活動しています。体内のエネルギーは食事をすることによって作られているため、適切なエネルギー摂取が必要です。
血液循環や呼吸、体温の維持などを行うために、人間は自然と多くのエネルギーを使っています。
要するに透析患者も例外ではなく、治療を受けるだけで多くのエネルギーを消耗していることでしょう。1日の決められた時間で血液循環を行い、毒素や老廃物、水分を体外に排出し、きれいな血液を再び戻しているからです。
人間が1日に摂取する必要なエネルギーとたんぱく質の量を確認してみましょう。体型で摂取量が異なるため、以下の例を参考にしてみてください。
最初に1日に必要なエネルギー摂取量を調べてみます。
標準体重1kgあたり30~35kcalで計算ができるので、例えば身長が172㎝の方の場合を見てみましょう。
最初にエネルギー摂取量に対して標準体重を計算します。
標準体重=身長(m)x身長(m)x22 ・1.72x1.72x22=65.08kg 必要なエネルギー摂取量=標準体重x標準体重1kcal30~35 65.08x30~35(kcal)=1,952~2,278(kcal)≒1,950~2,300(kcal) |
参考:これだけは知っておきたい食事管理のポイント | 透析レシピ
計算の結果、身長172㎝の方は1日に必要な摂取量が1,950~2,300kcalということがわかりました。
次に1日に必要なたんぱく質量を調べてみます。
たんぱく質量は標準体重1kgあたり0.9~1.2kgで計算できるので、エネルギー摂取量と同じ身長172㎝の方で計算してみましょう。
標準体重=身長(m)x身長(m)x22 ・1.72x1.72x22=65.08kg 必要なたんぱく質量=標準体重x標準体重1kcal0.9~1.2kcal 65.08x0.9~1.2(kcal)=58.57~78.09(kcal)≒59~78(kcal) |
身長172cmの方の1日に必要なたんぱく質量は、59~78kcalということがわかりました。
体を動かさない透析はエネルギーの消耗が少ないと思われるかもしれませんが、呼吸や血液循環により体力が消耗されます。
それ以外に透析ではエネルギーが奪われるため、上記の摂取量を参考にして食事をしてみてください。
エネルギーが消耗してしまうと、体の抵抗力や食欲などの低下に繋がります。食事によっては摂り過ぎに注意する栄養素がありますが、基本的にはエネルギーや良質なタンパク質に代わる食事を心掛けましょう。
食塩・水分の摂取量に注意
尿の排泄が低下してしまい、乏尿または無尿になると体外に不要な水分が出されなくなります。その状態が続いてしまうと、徐々に体重増加へ繋がります。透析患者の体重増減の激しさは、心臓への負担となり心不全を引き起こす要因の1つです。
また塩分の摂取に関しても、取り過ぎは高血圧状態となります。血圧の高い状態が長期に持続すると、水分と同じように心臓への負担が増します。
そのため、血液透析を行う患者は、体内に水分がない状態での目標体重を設定しています。体内の水分量がそのまま体重に影響を及ぼすため、体重管理が水分管理と直接繋がっているからです。
透析患者の方が塩分や水分量の管理をする場合、以下の数値を参考にしてください。
1日の食塩摂取量
血液透析患者 |
1日6g未満 |
---|---|
腹膜透析患者 |
{腹膜透析での除水量(L)x7.5+尿量(L)x5}g/日 |
血液透析患者の1日の塩分摂取量は、6g未満が摂取基準とされています。このときの塩分は食品中と付加食塩量を含んだ量のことです。
腹膜透析患者は、体内の食塩量が増加すると透析液の濃度を高くしなくてはいけません。高い濃度の透析液を使うと、その分腹膜へ大きな負担がかかります。
1日の水分摂取量
血液透析患者 |
できるだけ少なく |
---|---|
腹膜透析患者 |
腹膜透析での除水量+尿量 |
尿量の排出が低下している体内に、多くの水分を摂取すると余分な水分が残ってしまいます。透析時に、余分な水分を排泄することは、体に大きな負担がかかるので注意しましょう。
リンの摂取量に注意
リンは魚や肉、野菜などから摂取していき、主に骨に蓄えられます。しかし、尿量の排泄が低下していると尿や便などから十分に排出されない状態が続くと、高リン血症になる可能性があります。
通常は蓄えられない余分なリンは体外に出ていくのですが、腎機能低下のために体内にたまってしまうからです。
高リン血症になると、血管の石灰化状態の動脈硬化を促し、心不全や足の壊死、骨折などを引き起こす原因にもなります。
リンの摂取量と排泄されるバランスが重要とされています。
透析患者は尿からリンの排出がされないため、リン吸着薬の服用により体内のリンのバランスをとっています。
実際にリンの適正摂取量がどれくらいになるのかは、以下の数値を参考にしてください。
前述の計算で、身長172㎝の方の標準体重65.08㎏と出ているので計算してみましょう。
標準体重=身長(m)x身長(m)x22 ・1.72x1.72x22=65.08kg 必要なリン摂取量=1日あたり(0.9~1.2)x15x標準体重(㎏) 0.9~1.2x15x65.08=877.5~1,171≒880~1,170mg以下 |
このような計算から、身長172㎝の方が1日に摂取できるリンの量は、およそ880~1,170mg以下ということがわかります。ただし、この数値はあくまで参考数値として見てください。
食事療法や透析、リン吸着薬をうまく活用してリンの摂取量に十分気をつけましょう。
カリウムの摂取量に注意
血液中のカリウム濃度が増加してしまうと、基準値(3.5~5.5mEq/L)を超えて手足のしびれや麻痺、四肢脱力や知覚異常などの症状があらわれます。
体内にある適量のカリウムは、体の血圧や筋肉機能を調整をする重要な役割を持っているからです。
本来、尿中によってカリウムが排出されるのですが、尿の排出低下に伴いカリウムが体内にたまってしまいます。
カリウムの排出がうまくいかなくなると、高カリウム血症をきたしやすくなりますので注意してください。
では、カリウムの1日の摂取量の目安を確認しましょう。
1日の食塩摂取量
血液析患者 |
2,000mg以下 |
---|---|
腹膜透析患者 |
制限なし |
高カリウム血症の方は、定期検査を行ったり、カリウムを含む食事を控えたりしてください。不整脈の心電図異常や心停止といった重大な危険が生じる可能性があります。
透析にあたり食べていけないものとは
透析患者の腎機能が低下することによって、血液のろ過や老廃物を体外へ送り出す働きなどが衰えてしまいます。改善するためには、エネルギー摂取はしっかり摂りますが、塩分やカリウムリンは控えるような食事管理を意識するのがポイントです。
「何か食べていけないものがあるのでは?」このように考える方もいるかもしれませんが、特に何を食べてはいけないということはありません。正常の機能を失った腎臓に対して、食事管理を行えば問題ないからです。
前述した、1日の目安摂取量の数値を参考にしてみてください。一人ひとりの体調や透析環境が違うので、体に合った摂取量が重要です。
透析患者に良い食べ物は?
透析患者が日常生活で元気よく送るためには、栄養バランスが取れた食事が非常に重要です。バランスが取れた食事とは、朝昼晩の3食で主食や主菜、副菜をバランスよく摂ることです。
その中でも、でんぷん製品は効果的な食べ物とされています。
でんぷん製品は、小麦から生成されるタンパク質(グルテン)や無機質のカリウム、リンも少量しかふくまれていないからです。さらに、エネルギーは米や小麦粉と同じように摂取できるのが特徴です。
でんぷん製品を例えると、春雨や葛切り、マロニーなどが挙げられます。また、十割そばの場合はグルテンは含まれないのですが、それ以外になるとつなぎに小麦粉を使用しているのでグルテンが含まれます。
活動の源になるエネルギー補給は非常に重要なため、でんぷん製品を中心にバランスよく摂取してください。
透析患者はおやつを食べてもいいのか
バランスの良い食事を心掛けていても、たまにおやつを食べたくなるときもあると思います。透析をしているためおやつを食べてはいけないと思うかもしれませんが、全く食べられないということはありません。多少の制限はありますが、塩分やリン、カリウムなどの量に気をつければおやつを楽しむことも可能です。
エネルギーが補えてリンやカリウムなどが抑えられるおやつには、ういろうや水ようかんなどがあります。また、わらび餅やくず餅などもエネルギー補給におすすめです。
チョコレートやクッキー、せんべいには、塩分やタンパク質などが多く含まれているため、控えるようにしてください。低たんぱくで減塩されている、おやつ選びをしましょう。
透析患者はポイントを抑えて食事を楽しもう
人間は通常、食事から得たエネルギーを使って呼吸や血液循環、体温の維持を行います。さらに透析患者は、血液透析や腹膜透析の治療により体への負担が大きく、エネルギーの使用も激しい状態です。
透析患者は食事から適正エネルギーやたんぱく質を摂取することだったり、塩分やカリウム、リンを控えたりと制限はあります。重要なのは、全体的にバランスの良い食事管理をするということでしょう。
透析患者は腎障害の発症で、血液の循環や尿中によって老廃物を体外へ出す腎臓の働きが低下してしまいます。このため、腎機能の働きを透析を用いて行わなければなりません。体内の血液ろ過、老廃物を外に出す行為などは、体のエネルギーを大きく奪うため、ポイントを押さえて食事管理を楽しむことが重要です。
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当院は北千住駅から徒歩3分、駅近でアクセスも非常に便利な好立地にあります。
当院では、維持血液透析や緊急透析、各種血液浄化治療なども行い、患者様のさまざまな治療や疾患に対応可能です。また、血液透析濾過法(Online-HDF)という透析液をきれいにして、補充液として使う治療法を取り入れています。従来の血液透析より効率よく毒素の除去ができるため、関節痛や血圧低下などの合併症の改善・予防に期待ができるといわれています。
透析患者様は糖尿病や脳梗塞、循環器、消化器などの疾患にもかかる傾向がありますが、当院はこれらの疾患にも対応可能なため、いつでもお気軽にご相談ください。
施設紹介
東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
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